軸受寿命

●軸受は荷重を加えて回転させたときに、内外輪の軌道輪及び軌道面が絶えず繰り返し荷重を受けるために材料が疲れ、フレーキングという損傷の発生に至る。この時までの総回転数を転がり疲れ寿命という。
●軸受の寿命は、寸法・材料・熱処理加工法を同じにし、しかも同一条件で運転させてもかなりばらつきが大きいので統計的に扱い、一般的に90%の軸受がフレーキングを起こさずに回転できる総回転数を定格疲れ寿命という。


基本動定格荷重

条件として内輪回転・外輪静止の時に、定格疲れ寿命が100万回転になるような方向と大きさが一定の荷重を基本動定格荷重という。ラジアル軸受では中心ラジアル荷重であり、寸法表のCrは高炭素クロム軸受鋼の場合の値である。尚ステンレス鋼の場合は軸受鋼の85%の値を用いる。また単体軸受を2個差幅調整した組合せ軸受は、単体軸受の約1.62倍で換算される。


寿命計算式

転がり軸受の基本動定格荷重・動等価荷重・定格疲れ寿命との間には、次のような関係がある。

総回転数 L10=(Cr/P)3×106 (回転)
時間 L10h=(Cr/P)3×16667/n (時間)
距離 L10d=π×D×L10×10-6 (km)
使用条件に対する
最低基本動定格荷重
Cmin=P×(L10h×n/16667)(1/3) (N)
L10=基本定格寿命(rev)
L10h=基本定格寿命(h)
L10d=基本定格寿命(km)
P=動等価荷重(N)
Cr=基本動動定格荷重(N)
Cmin=最低基本動動定格荷重(N)
n=回転数(1/min)
D=回転体外径寸法(mm)

●定格寿命L10hの選び方

機械の運転状況
定格寿命時間L10h
使用頻度の少ない場合
500
短時間又は断続的に使用される機械で故障しても大きな影響の無い場合 4,000〜8,000
断続使用されるが故障すると大きな影響のある場合 8,000〜12,000
1日8時間使用されるが常時フル運転されない場合 12,000〜20,000
1日8時間フル運転される場合 20,000〜30,000
1日24時間連続運転される場合 40,000〜60,000
1日24時間連続運転され故障による停止を絶対に許されない場合 100,000〜200,000
●使用条件に対する寿命を考慮した軸受選定法
基本動定格荷重Crに近い大きな動等価ラジアル荷重Pが軸受に負荷されると極めて短時間で疲れ寿命に至る。一方、高加速度又は許容回転数×0.5以上の高速回転時では、ボールと軌道面のすべりによる損傷を防止するため、概ねP/Cr≧1%とする必要がある。
予め装置の使用条件(動等価ラジアル荷重P、回転数n)と必要な寿命時間L10hを明確にし、Cmin=P×(L10h×n/16667)^(1/3)から適切な型番を選定しなければならない。
下表並びに下グラフに示すように、一般的には[動等価ラジアル荷重]/[動定格荷重]=P/Cr=[普通荷重比:6〜12%]を目安に軸受の選定検討を行う必要がある。
P/Crとnが分かれば、下のグラフを利用して定格寿命:L10hを簡単に求めることができる。
L10h=50,000時間を基準とした場合にPとnが分かれば、下のグラフを利用して最低基本動定格荷重:Cminを簡単に求めることができる。このCmin以上の基本動定格荷重:Crをもつ型番を寸法編より選定するとよい。但し、回転数:nは選定される型番の許容回転数を超えてはならない。


寿命計算式の補正

一般には前式で寿命の計算はできるが、用途によって90%以上の高い信頼性を要求される場合は不十分である。最近の軸受鋼は改良が進み疲れ寿命が長くなり、潤滑剤と軸受の寿命の関係も明らかにされてきていることから、ISO281:1990では、次のような補正寿命計算式を用いている。

Lna=a1×a2×a3×L10 Lna:補正定格寿命[信頼性のレベルを(100-n)%とした時の寿命]
L10:基本定格寿命(rev)
a1:信頼度係数
a2:軸受特性係数
a3:使用条件係数

(1) 信頼度係数 a1
信頼度が90%以上の寿命を求める場合は、次の関係a1によって補正する。

●信頼度係数 a1の値
信頼度(%)
寿命 Lna 信頼度係数 a1
90
L10a
1.00
91 L9a 0.92
92 L8a 0.84
93 L7a 0.77
94 L6a 0.64
95 L5a 0.62
96 L4a 0.53
97 L3a 0.44
98 L2a 0.33
99 L1a 0.21
(99.6) (L0.4a) (0.10)
(99.9) (L0.1a) (0.037)

(2) 軸受特性係数 a2
軸受材料の製造方法や熱処理条件などの改良により、疲れ寿命が延長する場合に軸受特性係数a2で補正する。当社、標準軸受材料は厳選された高品質の真空脱ガス軸受鋼を使用しており、従来の軸受鋼に比べ寿命の長い事が種々の実験・実績によって明らかにされている。カタログの基本動定格荷重は、この寿命延長効果を考慮した値であり従来比、時間で約2.2倍、荷重で約1.3倍の増加である。勿論この時の軸受特性係数は、a2=1とすれば良い。


(3) 使用条件係数 a3
軸受の使用条件で、潤滑・温度・負荷などの条件に起因する補正を行う係数を使用条件係数a3という。潤滑が寿命に及ぼす影響は、良好な潤滑条件、軌道面とボール間に油膜があり金属接触しないで且つ(潤滑剤の動粘度>13mm2/s(13cSt))ではa3=1を採る。また、潤滑条件が良好でない場合(dmn≦10,000、潤滑剤劣化、内外輪の傾き大)には、a3<1となる。もし使用温度が120℃を越える場合は、寸法変化が大きくなり、しかも硬さが低下するために寿命も短くなる。この時の使用温度と寿命補正係数については、次の表による。


●温度係数 ftの値
軸受温度(℃) 125 150 175 200 225 250 275 300
温度係数
(ft)
軸受鋼 1.00 0.90 0.85 0.75 0.65 0.60 0.52 0.45
ステンレス鋼 1.00 0.95 0.90 0.86 0.82 0.78 0.74 0.70
※尚、120℃以上の温度では、普通の熱処理をした軸受は寸法変化が大きくなる。硬さの低下による基本動定格荷重の減少は避けられないが、寸法安定化処理を行うことにより高温でも寸法変化を抑えることができる。

●寸法安定化処理
寸法安定化処理記号 S0 S1 S2 S3
使用温度範囲(℃) 100〜150 150〜200 200〜250 250〜300


複数個の軸受のシステム寿命

個々の軸受の定格寿命は、90%の確率を持つものである。複数個の軸受のシステム寿命は、個々の軸受の定格寿命の最も短いものより更に短くなる。使用している軸受を全体を一つの軸受システム考えると、その定格寿命は次式で求められる。

1/L(10/9)=1/L1(10/9)+1/L2(10/9)+1/L3(10/9) ……… 1/Ln10/9
L=軸受システム全体としての定格寿命
L1、L2、L3・・・Ln=個々の軸受の定格寿命


基本静定格荷重

軸受にある静止荷重が加わった時にボールと軌道面の接触部分に局部的な圧痕状の永久変形を生じる。この永久変形のために回転調子が不具合となり音響・振動も大きくなるので、許容しうる静止荷重の基準として基本静定格荷重Corを次の様に定めている。ラジアル玉軸受の基本静定格荷重はボールと軌道の接触部において、最大接触応力が4200MPa(429kgf/mm2)以下になるような静荷重で、ボールと軌道の間に生じる永久変形量の和が、ボール直径の約1/10000になる値である。ステンレス鋼の場合の基本静定格荷重は、軸受鋼の80%を私用する。また、単体軸受を2個差幅調整した組み合わせ軸受は、単体軸受の2倍で換算される。


軸受荷重の計算

軸受に作用する荷重には、ベルト・歯車などの伝導荷重、稼働中の機械に発生する荷重、軸受が支持する装置の自重などがある。実際に軸受を使用する際には、大きさの異なる振動や衝撃荷重が加わり、これらを全て軸受荷重として正確に求めることは難しい。通常は、理論的に求められる計算荷重の値に、従来より得られている経験に基づく各種の係数を乗じて求める。

(1) 荷重係数、歯車係数、ベルト係数
軸受に加わるラジアル荷重やアキシアル荷重が、理論的な計算によって求められても実際に加わる荷重は、装置の振動や衝撃により計算値よりも大きくなるので、次のような係数を乗じて求められる。

[ 歯車伝導 ] ……… F=fw・fg・Fc
[ ベルト・チェーン伝導 ] ……… F=fw・fb・Fc
F=実際に加わる荷重(N)
Fc=理論上の計算荷重(N) 
fw=荷重係数
fg=歯車係数
fb=ベルト係数

●荷重係数 fw
運転条件 fw
衝撃の
ない場合
電動機、工作機、計器類、コンベア 1〜1.2
軽い衝撃の
ある場合
送風機、クレーン、コンプレッサー、
ポンプ、エレベーター、製紙機械
1.2〜1.5
強い衝撃の
ある場合
圧延機、クラッシャー、ドロップハンマー、
振動ふるい
1.5〜3

●歯車係数 fg
歯車の種類 fg
精密歯車
[ ピッチ誤差≦0.02mm、形状誤差≦0.02mm ]
1.0〜1.1
普通歯車
[ ピッチ誤差≦0.1mm、形状誤差≦0.1mm ]
1.1〜1.3

●ベルト係数 fb
ベルトの種類 fb
平ベルト(テンションプーリー無し) 4.0〜5.0
平ベルト(テンションプーリー有り) 2.5〜3.0
Vベルト 2.0〜2.5
歯付きベルト 1.3〜2.0
チェーン 1.2〜1.5

(2) 軸受への荷重配分
図のようにラジアル荷重F1、F2が加わるとき軸受氈Aに配分される荷重は次式によって求められる。

FR1=c/a×F1-e/a×F2

FR2=b/a×F1+d/a×F2

(3) 変動荷重の平均荷重
軸受に加わる荷重の大きさや方向が変動する場合は、その荷重条件による軸受寿命と等しくなるような平均荷重を求める必要がある。


動等価ラジアル荷重

実際には軸受を使用する際の荷重条件は一定ではないが、一般にはラジアル荷重とアキシアル荷重の合成荷重のことが多い。方向と大きさが一定とした場合の動等価ラジアル荷重は次式で表される。

アキシアル
荷重比
Fa/iZDw2
e 単列・複列軸受
Fa/Fr≦e Fa/Fr>e
X Y X Y
0.172 0.19 1 0 0.56 2.30
0.345 0.22       1.99
0.689 0.26 1.71
1.03 0.28 1.55
1.38 0.30 1.45
2.07 0.34 1.31
3.45 0.38 1.15
5.17 0.42 1.04
6.89 0.44 1.00

P=XFr+YFa
P=動等価ラジアル荷重(N) 
Fr=ラジアル荷重(N)
Fa=アキシアル荷重(N)
i=ボールの列数
X=ラジアル荷重係数
Y=アキシアル荷重係数
Dw=ボール直径(mm)
Z=1列あたりのボール数


静等価ラジアル荷重

ラジアル荷重とアキシアル荷重を同時に受ける軸受で、方向と大きさが一定のラジアル静止荷重を静等価ラジアル荷重といい、次式で表され大きい方の値を採る。

Po=0.6×Fr+0.5×Fa、 Po=Fr


安全係数

軸受に許容される静等価荷重は、基本静定格荷重によって決まるが、使用条件や要求性能によって軸受の使用限度が異なる。従って安全度を検討するために経験的な値である安全係数を用いて、次式により求めることができる。

fs=Cor/Po  fs=安全係数
Cor=基本静定格荷重(N)
Po=静等価荷重(N)

使用条件 fs
普通の運転条件の場合 1.0
衝撃荷重の場合 1.5
静かで高精度回転を要する場合 2.0


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