はめあいの重要性

軸受は軸とハウジングに適切にはめあわせることで、その機能が十分に発揮される。はめあい面にしめしろが不足していると軌道輪は、軸またはハウジングに対して円周方向に位置ずれを起こす。これをクリープと呼び一度発生すると、はめあい面は著しく摩耗し、軸またはハウジングを損傷させるだけでなく、軌道内部に摩耗粉が侵入して振動や異常な発熱の原因となることもある。
従ってクリープを防止するために、回転荷重を受ける軌道輪に必要なしめしろを与える。静止荷重を受ける軌道輪は普通しめしろは付けない。但し、振動が大きい用途に使用するときは内輪・外輪の両方をしまりばめにした方が良い。




はめあいの計算

用途に最適のはめあいの選定には、荷重の大きさ・回転条件・温度条件及び軸受の取付・取外しなどの様々な条件を考慮して設定する。薄肉のハウジング・柔らかい材質、また中空軸に軸受を取付けるときは、普通のしめしろより大きくする。

(1) 荷重の大きさとしめしろ
軸と内輪のしめしろは、ラジアル荷重が加わると減少する。その量は次式から求められ、大きい値を採用する。

ΔdF=0.08×(d/B×Fr)0.5/1000(mm) 
但しFr≦0.3×Corのとき
ΔdF=0.02×Fr/B/1000(mm) 但しFr>0.3×Corのとき

(2) 軸受と軸及びハウジングの温度の影響
軸受の内輪・外輪・ボールは軸受運転中は各々温度差が生じ、その影響は軸・ハウジングとのしめしろに変化を及ぼす。軸受内部の温度とハウジング周辺の温度差をΔTとすると、軸と軸受のはめあい面の温度差は(0.1〜0.15)×ΔTと仮定できる。従ってこの温度による内輪のしめしろの減少量ΔdTは次式で求まる。


ΔdT=(0.1〜0.15)×ΔT×a×d≒0.0015×ΔT×d/1000(mm)

また、外輪とハウジングの間では、両者の温度差及び膨張率の差によってしめしろは増加するときもある。ハウジング材はアルミニウムや亜鉛などの線膨張係数の大きい材質を使う場合、しめしろは低温時に増加する。


(3) 有効しめしろとはめあい面の仕上げ
はめあい面の粗さは、はめあいによって圧縮され有効しめしろは、見かけのしめしろより小さくなる。この見かけのしめしろの減少量は、はめあい面の仕上げ程度によって影響を受けるが、一般に有効しめしろは次式によって求められる。


[ 研削軸 ] ……… Δd=d/(d+2)×Δda (mm)
[ 旋削軸 ] ……… Δd=d/(d+3)×Δda (mm)
以上を結合して、内輪回転荷重のときの内輪と軸とに
必要な見かけのしめしろは、次のようになる。
Δda≧(ΔdF+ΔdT)*((d+3)/d又は(d+2)/d) (mm)

(4) はめあい面の面圧と最大応力
軸受をしめしろを付けて組み込んだとき、はめあい面の円周方向応力が120Mpa(12kgf/mm^2)以下であれば、軌道輪が割れることなく安全である。


  面圧 Pm (MPa)
輪と内輪
(中空軸)
Pm=(EΔdb(1-(d/db)2×(1-(d0/d)2))/(2d(1-(d0/db)2))

(中実軸)
Pm=(EΔdb/(2d))×(1-(d/db)2)
ハウジング
と外輪
(Dh≠∞)
Pm=(EΔDa(1-(Da/D)2×(1-(D/Dh)2))/(2D(1-(Da/Dh)2))

(Dh=∞)
Pm=(EΔDa/2D)×(1-(Da/D)2)
  円周方向応力 δt (MPa)
輪と内輪
(中空軸)
δt=(EΔdb(1+(d/db)2×(1-(d0/d)2))/(2d(1-(d0/db)2))

(中実軸)
δt=(EΔdb/(2d))×(1+(d/db)2)
ハウジング
と外輪
(Dh≠∞)
δt=(EΔDa(1-(D/Dh)2))/(D(1-(D/Dh)2))

(Dh=∞)
δt=EΔDa/D

(5) 圧入力と引抜力
圧入力と引抜力は、はめあい面の表面と面圧及び摩擦係数により次の式で求められる。


Kp=9.8×π×μ×Pm×B×(d又はD) (N)
但し内輪を軸に又は、外輪をハウジングに圧入のとき … μ=0.12
  内輪を軸から又は、外輪をハウジングから引抜のとき … μ=0.18

●記号の意味
ΔdF=荷重によるしめしろの減少量 (mm) Cor=基本静定格荷重 (N)
d=呼び軸受内径 (mm) Δdb=内輪の有効しめしろ (mm)
B=呼び軸受幅 (mm) do=中空軸の内径 (mm)、中実軸のときdo=0 (mm)
Fr=ラジアル荷重 (N) Da=外輪軌道径 (mm)、一般にDa=(4×D+d)/5 (mm)
ΔdT=温度差によるしめしろの減少量 (mm) D=呼び軸受外径 (mm)
ΔT=軸受内部とハウジング周囲の温度差 (℃) Dh=ハウジング外径 (mm)、剛体のときDh=∞
a=線膨張係数 (1/℃) Kp=圧入力又は引抜力 (N)
Δd=有効しめしろ (mm) μ=はめあい面の摩擦係数
Δda=見かけのしめしろ (mm) db=内輪軌道径 (mm)、一般にdb=(D+4×d)/5 (mm)
E=鋼の縦弾性係数=208000 (Mpa)  

下図は、超薄型肉形67シリーズに関して△=30℃、施削軸を圧入したときに、クリープを起こさない最低のしめしろを比ラジアル荷重に対して示したものである。


上図は、67シリーズの内輪に中実軸をはめあわせた時の有効しめしろに対するはめあい面の円周方向応力の関係を示している。σt<120(MPa)であれば割れる事無く安全であり有効しめしろの上限と考えれば良い。


下図は、同様のはめあい条件で圧入する場合と、引抜く場合の各々に必要な力を示したものである。



軸・ハウジングの精度と粗さ

はめあわせる軸とハウジングは普通下記の精度と表面粗さが満足される必要がある。

●軸・ハウジングの推奨精度
区分 記号 ハウジング
真円度
はめあい部の
軸径許容差の
1/2以下
はめあい部の
ハウジング内径
許容差の1/2以下
円筒度
軸受幅の範囲
で軸径許容差
の1/2以下
軸受幅の範囲
でハウジング内径
許容差の1/2以下
直角度
3/1000(0.17°)以下
はめあい面
の粗さ
Rmax
3.2
6.3

●表面粗さの値の対応表
中心線平均
粗さ(Ra)
最大高
(Rt)
粗さ
番号
三角記号
0.025 0.15 N1 ▽▽▽▽
0.05 0.3 N2
0.1 0.6 N3
0.2 1.2 N4
0.4 2.4 N5 ▽▽▽
0.8 4.8 N6
1.6 9.6 N7
3.2 19 N8 ▽▽
6.3 38 N9
12.5 75 N10
25 150 N11
(50) (300) N12  
(100) (600) N13

●形状位置精度の種類と記号
種 類 記号
形 状 真 直 度
平 面 度
真 円 度
円 筒 度
線の輪郭度
面の輪郭度
方 向 平 行 度
直 角 度
傾 斜 度
位 置 位 置 度
同 軸 度
対 称 度
振  れ


内径・外径寸法の選別区分

しめしろの過不足が問題となる用途に対しては、ご要望により内径・外径寸法を2区分に選別し下記表示で納入します。

備考: 1. P5、P4、ABEC5P、ABEC7Pの軸受に適用
2. D=外径寸法許容差の下限値
3. d=内径寸法許容差の下限値
4. ご要望の場合には次の何れかを御明示下さい
ZC1 ……… 内径のみ2区分に選別
ZC2 ……… 外径のみ2区分に選別
ZC3 ……… 内径・外径共に2区分に選別

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